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高調波全般Q&A
「基本波の整数倍の周波数をもつ正弦波」と定義されています(JIS Z 9212 エネルギー管理用語(その2)より)。
例えば,基本波の3倍の周波数を「第3高調波」,5倍の周波数を「第5高調波」などと言います。
電気分野で「高調波」は,通常「高調波電流」を意味しています。
高調波全般Q&A
・調相設備(コンデンサやリアクトル)の振動,うなり,異常過熱
・電力ヒューズの加熱溶断
・通信機器の雑音,映像の乱れ
・電力量計の計量誤差発生・継電器の誤動作
・家電製品の誤作動,不動作,エラー表示などの不具合
などがあげられますが,これらに限らずさまざまな機器に影響を及ぼします。
高調波全般Q&A
高調波規格は現在,国際的にはIEC 61000-3-2:2018+AMD1:2020,国内ではJIS C 61000-3-2:2019に規定されています。IEC規格の2018年版で改正された内容は,JISに反映され2019年3月に発行されました。
高調波全般Q&A
高調波規制はIEC 61000-3-2 をベースとしており,欧州や中国では強制規格になっていますので,その地域で販売する場合は規格遵守が必須です。
日本の高調波規制は,JIS C 61000-3-2:2019によりますが,法規制ではなく,経済産業省から業界に対して遵守要請されています。1990年台後半から各工業会では定期的に実態調査を行い,経済産業省へ報告してきましたが,遵守率が100%に近くなったため,2012年度よりその義務はなくなりました。しかしながら照明工業会では,LED機器を含む全ての5W以上の照明機器が対象になったことから,継続して年に1回,会員会社製品の実態調査を実施し,規格遵守の確認と不適合機器の遵守対応を要請しています。
高調波全般Q&A
JIS C 61000-3-2:2019は,電源電圧300V以下の商用電源系統に接続して用いる定格電流20A/相以下の電気・電子機器[家電・はん(汎)用品]に適用されます。
また,照明機器はクラスCに分類され,有効入力電力が5W以上の全ての照明機器が対象となります。(2011年版では有効入力電力が25W以下の照明機器は放電灯照明機器のみが対象でしたが,2019年に改正されたJISではLED照明器具を含む全ての照明機器が対象となりました。)
JIS C 61000-3-2:2019 高調波電流限度値の適用クラス
■適用範囲
・300V 以下の商用電源系統に接続される定格電流20A(/相)以下の電気・電子機器(家電・汎用品)
照明機器の該当性 | 種別 | 調光器 | 制御装置 | 限度値 | |
5W~25W | 25W超え | ||||
照明機器 ※5W未満は限度値なし |
白熱電球照明 | なし または 位相制御式以外 |
なし | 適合と判断(測定不要) | |
内蔵 | クラスD または 入力電流の波形条件 または THD70%以下の高調波割合 (制御手段をもつものは最大電力で判定) |
クラスC | |||
器具内用位相制御式 | - | クラスA | |||
その他の照明機器 | クラスC (制御手段をもつものは下記) (位相制御式を除く) |
||||
照明機器以外 ※75W以下は限度値なし |
白熱電球用独立形位相制御調光器 (定格電力1.7kW以下のものは適用外) |
クラスA | |||
白熱電球用以外の独立形位相制御調光器 (次のものは適用外 定格電力200W以下のトレーリングエッジ調光器 定格電力100W以下のリーディングエッジ調光器) |
|||||
上記以外でクラスB~Dに分類されない機器 |
(備考)
○クラスCで制御手段をもつものは、Pmax、および、PmaxとPminとの間でTHCが最大となる制御設定で測定し、Pmaxにおいて表2で規定する百分率で示す高調波電流値以下
- Pmax≦50 Wの場合、Pminは5 W
- 50 W < Pmax≦250 Wの場合、PminはPmaxの10%の値
- Pmax > 250 Wの場合、Pminは25 W
○適用クラスの異なる複数のランプ制御装置を組込む照明機器は、制御装置毎に限度値適用 (例)白熱電球+調光器、蛍光ランプを組込む家庭用照明器具(JISにのみ規定)
○この規格に適合する制御装置内蔵形ランプを用いる照明器具は、要求事項に適合しているとみなし、測定を行う必要はない。(JISにのみ規定)
高調波全般Q&A
25W以下のLED照明器具の対象化も含め,高調波規格の主な改正点は以下の通りです。
1) 照明関連の定義が追加
2) 5W未満のすべての照明機器の限度値なし(高調波規制の対象外)
3) 特定定格電力以下の独立形位相制御調光器の限度値なし
4) 2W以下の制御モジュール組み込みの照明機器はこれを除いて測定可能
5) 5W以上25W以下の限度値がLED照明を含むすべての照明機器に適用
従って,5W以上のすべての照明機器が高調波規制の対象となります。
6) 25W以下の緩和条件の追加(以下の③が追加,①②は従来通り)
①クラスD
②波形位相での判定
③THD≦70%かつ,基本波電流の割合が第3,5,7,9,11次でそれぞれ35%,25%,30%,20%,20%以下,第2次高調波は5%以下
7) 家庭用照明機器の緩和条件(25W→35W)を削除
8) 調光器は位相制御式以外「照明機器」に分類(明確化)
9) 調光器組み込み照明機器の限度値規定修正
10) 位相制御式調光器の試験条件の明確化
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&A定義
JIS C 61000-3-2:2019には,用語及び定義の3.13に次の通り定義されています。
「3.13 照明機器
基本機能が放射光を発生,調整及び/又は分配する機器。」
具体例は,「5.2 照明機器の説明」に記載があります。
・ランプ及び照明器具
・基本機能の一つが照明である多機能機器の照明部分
・独立形照明制御装置
・紫外線及び赤外線応用機器
・広告用の電飾サイン
・位相制御式以外の照明機器用独立形調光器
・DLT制御装置
(DLT:Digital load side transmission lighting control)
また,この規格においては照明機器に含まれず,除外扱いになる具体例は次の通りです。
・複写機,オーバヘッド投射機,スライド投射機のようにほかの基本機能をもつ機器に内蔵するか,又は目盛り用若しくは表示目的の照明デバイス
・主機能が放射光を発生及び/又は調整及び/又は分配する目的ではないが,一つ以上のランプを含み,セパレートスイッチを含むか又は含まない家庭用電気器具(例 光源組込みレンジフード)
・独立形位相制御調光器
・舞台照明及びスタジオ用の専門家用照明器具
・非常時にだけ点灯する非常用照明器具
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&A機器の分類
一般的な独立形直流電源(汎用性のあるもの=LED専用ではないもの)はクラスA,LEDのみを負荷とする独立形直流電源は照明機器に該当し,クラスCに分類されます。独立形といえども特定のLEDモジュールと組み合わせて照明器具として構成されるため,定義から考えてもLED専用である限りは照明機器とみなされます。
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&A機器の分類
白熱電球用以外の独立形調光器は照明機器に定義されています。従って,放電灯用やLED用で25Wを超える場合は7.4.2が適用され,5W~25Wの場合は7.4.3が適用されます。
ただし,白熱電球用以外の位相制御式調光器は限度値無しの除外規定があります。調光器の制御仕様により,判定が変わりますので仕様をご確認ください。
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&A機器の分類
定義には「器具内用調光器」と「独立形調光器」が規定されており,照明機器の外郭に内蔵するもの及び電源ケーブルに取り付けるものは器具内用調光器,それ以外のものは独立形調光器になります。また,制御方式によって「位相制御式」と「それ以外の制御式」に分類されます。「位相制御式調光器」とはトライアック,サイリスタ(SCR)や大容量トランジスタなどを用いた位相制御式(逆位相制御式を含む)調光器を指します。
適合負荷によっても「白熱電球用」,「白熱電球用以外(放電灯用,LED用など)」にそれぞれ分類されます。
定格電力が1.7kWを超える白熱電球用独立形位相制御調光器と,白熱電球用以外の独立形位相制御調光器で定格電力が200Wを超えるトレーリングエッジ(逆位相)調光器,および定格電力が100Wを超えるリーディングエッジ(正位相)調光器はクラスAの限度値が適用されます。
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&A機器の分類
白熱電球用で 25W超のものはクラスAが適用されますが,放電灯用や,LED用など,それ以外のものはクラスCが適用されます。
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&A機器の分類
照明工業会では,独立して直接的に光出力レベルのみを制御するものを照明機器用独立型調光器と定義し,照明器具や独立型照明制御装置をPWM信号で制御するもののみを対象としています。他機器と通信により拡張接続され,上位機器やセンサなどが繋がる照明制御システム機器は対象外としています。
(照明機器用独立形調光器の例)
(照明機器用独立形調光器に含まないものの例)
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&A機器の分類
独立形調光器に含みます。例えば,“PWM信号を発生する無線受信機a”が照明機器内にあり,”無線調光器b”が照明機器外にある場合,aは照明機器としてクラスCが適用されます。bは独立形照明制御装置としてクラスCが適用されます。
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&A機器の分類
表示目的の照明デバイスであり,照明機器には含まないと判断し,クラスAが適用されます。
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&A機器の分類
JIS C 61000-3-2:2019では,用語及び定義の「3.19 照明制御装置」注記5に次の通り記載されていますので,照明機器には該当しません。
「この規格では,機械式スイッチ及びリレー,並びに入り切りだけを行うその他の単純なデバイスは,ひずみ電流を発生しないため,照明制御装置とはみなさない」
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&A試験方法
規格上は指定値となっていますが,現実的には,ほとんどの照明機器メーカが試験機関に機器を提出する時,基本電流や力率を指定していません。そのため,試験機関は6.3.2に従って,最大基本電流と力率を測定し,高調波限度値の計算のためにこの値を使用します。
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&A試験方法
制御モジュールを除外できる条件として,「制御モジュールとそれ以外の部分の入力電流とを別々に測定可能」,かつ,「制御モジュールを除いた照明機器で通常動作条件下のエミッション試験時の入力電流が変わらないこと」と定められています。照明機器内の配線を変更するだけで制御モジュールの影響を除外できるものは対象となりますが,制御装置と一体化されているものなど,制御モジュールを簡単に取り外せないものは単一制御モジュールとみなすことはできません。
例えば,制御モジュールが照明制御装置とは別基板になっていて,コネクタを外して繋ぎ変える程度で別々に測定できる場合は,物理的に外して測定できると判断できます。一方,照明制御装置と制御回路が同一基板上に実装されていて,例えばパターンカット等の破壊を伴わないと別々に測定できない場合は,物理的に外して測定できないと判断します。
(制御モジュールを削除して測定できる例)
(制御モジュールを削除して測定できない例)
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&A試験方法
各制御モジュールがそれぞれ2W以下ならば,すべて除外して測定できます。2Wを超える制御モジュールが含まれる場合,そのモジュールは除外することはできません。
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&A試験方法
人感センサの出力に応じて適合負荷の電源を入り切りするものであれば,適合負荷で消費する電力は有効入力電力に含みません。機械式スイッチ及びリレーは,ひずみ電流を発生しないため,照明制御装置とはみなしません。
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&A試験方法
使用を指定している「照明機器のすべての種類」で形式試験を実施し,適合していることを確認する必要があります。2種類の照明機器を指定していれば,2種類の代表サンプルが必要となります。ここで言う照明機器の「種類」とは,照明機器の製品品番を指しているのではなく,白熱灯用,放電灯用など,光源の種類を指しています。
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&A試験方法
JISの試験方法は形式試験の条件を規定したものであって,使用の可否を規定したものではありません。使用を指定していないものを組み合わせて使用することはできません。
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&A試験方法
白熱ランプでの試験条件を規定したものであって,それ以外の負荷での試験を省略できるかどうかは,どの種類の照明機器の使用を指定しているかによります。例えば,白熱ランプ用が定格電力2kWであって,その他の負荷がそれ以上の定格電力である場合は,その負荷で試験する必要があります。
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&A試験方法
制御モジュールを取り外すことができる条件に「入力電流が変わらないこと」が定められていますので,位相制御調光器は,調光器を外すと入力電流の波形が大きく変わるため,上記と同様に,制御モジュールと判断することはできません。
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&A高調波電流限度値
25Wを超える調光用の照明機器は7.4.2に規定されており,以下の2つの条件で測定したときに「最大有効入力電力(Pmax)において表2で規定する百分率で示す高調波電流値以下」にする必要があります。
・最大有効入力電力(Pmax)となる条件
・最大有効入力電力(Pmax)と最小有効入力電力(Pmin)の間で高調波電流THCが最大となる条件。(THC : Total Harmonic Current 総合高調波電流)
PminはPmaxの値によって次のように決定され,調光時に25W以下であってもTHCが最大になる条件で限度値を満足する必要があります。
- Pmax≦50 Wの場合,Pminは5 W
- 50 W<Pmax≦250 Wの場合,PminはPmaxの10%の値
- Pmax>250 Wの場合,Pminは25 W
一方,7.4.3で規定される有効入力電力が5W~25Wの照明機器では,有効入力電力が最大になる制御及び負荷の条件だけで測定すると規定されています。
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&A高調波電流限度値
照明機器がそれぞれ独立して電源端子を有していますので,個々の照明機器がJIS C 61000-3-2:2019の規定に満足していれば問題ありません。(この場合,7.4.3の条件が適用されます)
通信線で連動させる機能はシステム機能であり,システム全体の高調波規定はありません。
なお,「一つの照明機器に種々のランプ制御装置を組み込み,適用限度値の表が複数にわたる場合は,一般的には個々のランプ制御装置ごとに測定し,各々の限度値を適用する。」の意味は,照明機器の中に白熱灯や蛍光灯など適用限度値が異なる複数のものを備えた場合の規定です。従って、この質問はこれには当てはまらず,むしろJIS C 61000-3-2:2019 の6.4のラックまたはケース収納機器の解釈に類似しているので,電源が独立しているときは個別に測定してよいと判断できます。
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&A高調波電流限度値
照明機器はクラスC機器の限度値が適用されます。25W以下の場合は7.4.3が適用されます。 JIS C 61000-3-2:2019では製品単品に対する限度値が規定されています。複数連結した状態が一つの製品であるなら,複数連結した状態で測定する必要があります。
一つの製品かどうかは販売している状態が連結されているか否かによります。一般的な家電製品の場合はコンセントに差し込むプラグ一つから電力供給しているか否かによります。製品形態がどのようになっているかで判断する必要があると考えます。複数連結で製品設定がなされている(品番,定格が設定されている)場合,その状態での電力で判定されます。
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&A高調波電流限度値
「制御手段(例えば,調光,色)をもつそれらの照明機器は,次の設定条件で試験したとき,最大有効入力電力(Pmax)において表2で規定する百分率で示す高調波電流値以下とする。」とありますので,調光時の高調波電流についても,最大負荷条件で計算した表2の最大許容高調波電流以下であれば適合していることになります。従って,最大負荷時の力率を使うことになります。
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&A高調波電流限度値
以前のIEC規格は「最後のピーク」と規定されていましたが,現在のIEC規格では規定文が変更され,単に「ピーク」となっています。工業会内での取り扱いは,複数のピークがある場合「最大のピーク」で考えれば良いとしています。また,図 a) に示す電流波形の場合,「9kHz以上の周波数成分はこの評価に影響を与えてはならない」とJISに規定されていますが,測定機器によってはピークを正しく判定できないことがあります。このため,2021年に発行されたIECの解釈シートでは,この成分を除いてピークを判定する方法として,図 b) のようにディジタルオシロスコープのアベレージモードで波形を測定してピークを判定する例が示されています。
(電流波形ピークの判定事例)
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&Aその他
従来,日本では「家電・汎用品高調波抑制対策ガイドライン」に従い,照明機器に関する限度値の境界を35W以下としていましたが,家庭用照明器具で電子安定器を用いた35W以下のものは限度値を満たすことが寸法的な制約などにより困難であり,照明機器全体の消費電力に占める割合がわずかであることから,家庭用に限って規定の適用境界電力を35Wに緩和していました。
しかし,LED照明の普及に伴い,照明機器の低消費電力化が進み,35W以下の照明機器が占める電力の割合が増えてきたため,IECで規定する25Wに合わせることになりました。
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&Aその他
JIS C 61000-3-2の基準に適合する機械・装置は,ガイドラインでの高調波発生量の計算対象から除外できます。従って,JIS C 61000-3-2の対象となっている照明機器は,ガイドラインの対象外となります。
高調波規格JIS C 61000-3-2:2019に関するQ&Aその他
過去の実績から,JIS C 61000-3-2を満足しているものであれば,台数が増えても高調波の問題はおきないと考えています。台数が増えても,高調波電流の含有率は変わりません。